
ほがらかな治療院では鍼灸師の国家資格を持っているだけでは、鍼灸治療を担当することはできません。 鍼灸治療を担当するスタッフにはいくつかの条件が課されているのです。
当治療院にいらした先生方には、まずマッサージを担当して頂いております。 多くの方のお身体に触れることにより、本に書かれた知識だけではなく実際に手の感覚を研ぎ澄ませていただくことを最初の課題としております。 ツボが正確に押せるようになり、マッサージで一定の指名が取れるようになって初めて院長の試験を受けることが許され、 試験に合格した者のみに治療院内での鍼灸施術を担当することができるようになります。
ただし試験に合格した後でも、万が一指名の数が一定の基準以下に落ちてしまいますと、鍼灸施術の担当者としての資格が取り消されてしまいます。
このようにいくつかの厳しい基準を設けることにより、技術水準の維持と専門職としての責任感を養うとともに、 患者さんの信頼を裏切るようなことがないように、常日頃から万全の態勢を整えております。
中国の鍼にくらべますと日本の鍼はとても細く、髪の毛程度の太さしかございません。体質などにもよりますが、 きめ細やかで繊細な日本人の体には、我が国の風土の中で何百年もの長い時間をかけて、我々の体質に合わせて改良されてきた細い鍼の方が、やはり向いているようです。
ほがらかな治療院で使用している鍼も、直径が0.2㎜以下の日本の細い鍼を使用しているため、 皆さんが想像しているほどの痛さはなく、出血することもほとんどございません。
また当治療院では感染症予防のため、鍼治療で使用する鍼はもちろんのこと、鍼などをのせておくシャーレもすべて完全な使い捨てにしております。 さらに使用済みの鍼などは不法投棄などされないように、信頼のおける医療廃棄物処理業者により合法的な手順に基づき処理されております。
条件にもよりますが鍼治療は整体マッサージや灸治療にくらべて、鎮痛効果が高く即効性に優れております。 急性のぎっくり腰や寝違いなどの治療では、特に顕著な効果を実感することができます。 また慢性化した坐骨神経痛や三叉神経痛・肋間神経痛などの様々な神経痛への鎮痛効果にもすぐれ、むち打ちの後遺症や膝などの関節痛にも有効です。
使い方次第で幅広い疾患に対応できますが、当治療院では筋肉や神経・関節などの運動器にかかわる疾患の方に特にお勧めしております。
ほがらかな治療院で使用しているお灸は、間接灸と呼ばれる種類のもので、皮膚に直接火があたらないようになっております。 火傷などにより跡が残るようなことはあまりないのですが、それでも肌の弱い方などでたまに水脹れが出来てしまうこともございますため、 とくにご希望がない場合は鍼治療の方を中心に行っております。
とはいえやはりお灸の気持ちよさへのファンは多く、治療院内での治療にとどまらず自宅での施灸も人気があります。希望される方には自宅でお灸をするために、当院での治療後にツボに印を付けさせていただいております。
江戸時代のころ漢方薬はまだまだ高価なため、一般の庶民には簡単には手が出せませんでした。 そこで広まったのがお灸なのです。鍼灸師やお寺のご住職さんなどに灸点をおろしてもらい、自宅で毎日お灸を据えることが一般庶民の健康法の一つだったのです。
鍼治療に対し灸療法は即効性というよりも、じんわりと深部にとどくような感じであり、慢性痛や体質改善にとても良い効果があります。 毎日少しずつ続ける必要がありますが、ゆっくりと体の奥の方から改善されていくのが実感できます。 冷え症や便秘症などの長年の体質改善などに特にすぐれ、不眠症や月経異常などのような自律神経やホルモンのバランスを整えることができます。 古臭く陰気なイメージをお持ちの方も多いようですが、派手さはないものの牛歩のように少しずつゆっくりと、しかし確実に効果を実感することができます。
西洋医学も東洋医学も同じ医学でありながら、同じ患者さんに対して異なった診断や治療法を用いています。 いったいなぜこのようなことが起こるのでしょうか。両医学の病に対する考え方の違いはどのようなところにあるのでしょうか。 ここではこの両医学の発想の違いと特徴について少しまとめてみました。
まず私たちが病気になったときにお世話になることの多い、一般的な病医院で行われています西洋医学について整理してゆきましょう。
西洋医学の基本的な考え方は、推論から実験を行い実証していく自然科学の考え方が根本にあり、病気の原因を細かく分析し、 客観的なデータに基づき絶対的な結果を導き出そうとします。 患部から器官、器官から組織、組織から細胞、最近では細胞から遺伝子にまで分析範囲はさらに細かく精密化しています。 このため病医院などでは疾患の部位や器官別などにより専門の診療科が分かれており、近年ではその診療科が更らに疾患別の専門科に細分化される傾向にあります。 さらに近年の目覚ましい科学進歩により検査・診断機器の高度化がすすみ、それらを駆使することにより、 病態の画像化や数値化などのデータによる絶対的な根拠を追及する傾向はさらに強まっています。
それに対し東洋医学の基本的な考え方は、陰陽や虚実などのような自然哲学に基づいた相対的なバランスを重要と考えます。 プラスとマイナスなどのような性質の異なる複数の概念の相対比較による量や質の平衡状態を常に重視しています。 生体を一個の統一ある生命体としてとらえ、様々な症状や病態を個別に取り上げることはせず、一連の症候群として把握します。
「天人一合」の考え方により、人間も自然界の一部であり、天(自然界の原則)に逆らわず、 天に従って生きていれば健康が保たれて長寿を全うできるというものなのです。自然界が常に微妙なバランスの基に保たれているように、 私たちの生命活動も健全であるにはバランスの維持を欠かすことはできないのです。偉大な自然界を大宇宙とし人間を小宇宙とするこの考えかたのもとでは、 治療の内容においても、症状の表れている患部のみに執着することはなく、陰である肉体と陽である精神のバランスを整え、 大宇宙である生活環境や習慣の乱れを正し、小宇宙である私たちのあるべき状態に導いていくこととなります。 すべてのバランスが適切な状態に治まってゆくと、様々な病状も治まってゆくのです。
東西両医学にはそれぞれの特徴とともに、やはり双方に長所と短所が存在します。
西洋医学の科学的な価値観は、合理的であり効果が立証された療法を積極的に取り入れながら発展してきました。
最先端の機器を積極的に導入することにより、その進歩の速度は日を追うごとに加速しています。
かつては不治の病といわれていたような病をも克服し、不可能と思われていたことを次々とクリアしています。さすがに万能とまではいえなくても、 その可能性は計り知れないものがあります。
しかし分析による客観化されたデータを重要視してしまうあまり、患者さん自身の人間性や価値観を置き去りにしてしまいがちな傾向が強くなります。
すべてのお医者さんがそうであるというわけではありませんが、人間としての患者さんよりも、疾患名や検査データに注意が注がれる傾向にあるようです。
またいくら身体症状が現れていても、検査で異常が検出できなかった場合は、「異状なし」として扱われてしまい、 有効な対処法が無くなり対症療法のみとなってしまいます。原因の特定できる疾患に対しては様々な対処が可能ですが、 原因が不明瞭な症状への対処は苦手としています。
東洋医学の大きな視野で考える価値観は、患者さんの肉体的な苦痛のみにとどまらず、 精神的な異変にも対処できる柔軟さが特徴的です。すべてのバランスを整えることに目的があるため、 原因不明とされる病気や難病とされる疾患に対しても、柔軟に対応することが可能です。
事実、西洋医で有効な治療手段がなくなったという患者さんが、東洋医学を頼ってこられることは日常的に起きています。
また身体的な負担の少ない療法が多く、治療に伴う副作用や体力的・精神的なダメージがほとんどありません。
しかし経験の蓄積による哲学思想に重心を置き過ぎたために、東洋医学の基礎医学である解剖学や生理学の分野は数千年前の古典のままであり、 理論を証明するための道具のような状態となっています。理論の解釈なども様々であり、良くいえば柔軟ではありますが、 治療家の経験や技量による治療効果の差が大きく、不透明な感があります。臨床を重視するあまり、検証をおろそかにしてきたことも否定できないでしょう。
最近では世界的に鍼灸の具体的な効果を、客観的な科学的な視点で検証しようとする動向も見られますが、西洋医学のそれと比べますとまだまだ未熟さは否めません。
また病原菌やウイルスなどを原因とする感染症への対処などは、体力をつけ抵抗力を増すことが大きな目標となるため、 緊急を要する急性期の患者さんなどにはほとんど対応できません。
このように両医学にはそれぞれの特徴がございます。どちらが優れているとかではなく、双方を尊重しあい、 長所を伸ばし短所を補う努力を続けていくことが大事であることは誰の目にも明らかなことといえるでしょう。
東洋医学とは長い年月にわたり、広大な中国全土で古来から伝承されてきた医療経験や自然哲学を背景にして漢の時代に集大成された医学であります。 そのため漢方医学とも呼ばれますが、この思想が中国のみに留まらず、日本はもちろんのこと朝鮮半島をはじめ、 インドや中央アジア・西南アジアまで、広大な範囲で多大な影響を及ぼしているため、あえて東洋医学と呼ばれています。
その東洋医学の最古の古典である「黄帝内経」が書かれたのは、今から二千年以上も昔の中国の前漢時代といわれています。 黄帝外経というのもあったようですが、残念ながらその内容は現在にはまったく伝わっていません。 黄帝内経の原本はすでに失われており、最古の写本は日本の京都の仁和寺に、平安末期の写本が国宝として所蔵されているそうです。
さて東洋医学を志す者たちのバイブルともいえる黄帝内経の「素問 異法方宜論」にはこのようなちょっと面白し記述があります。
「中国本土は広く、各地で各々の環境に合った医術が誕生し達しました。 東方の国は、海の向こう側から日が昇るのが見える海岸の近い地域で、ここの民は魚肉や塩気を多く取り、 そのため血が粘り腫れ物ができやすい。これに対して砭石(へんせき)を用いて切開する医術が生まれた。 切開術や瀉血療法の医術は東方の国より発達し、ここから伝わったものである。
西方の国は、日没する砂漠地帯で、ここの民は丘陵地帯に住み、獣肉を常食としてよく肥えているところから、 外邪の進入による病よりも、体内の臓腑から病気を起こすことが多く、そのために湯液療法が生まれた。薬物療法は西方の国で発達し、ここから伝わったものである。
北方の国は、日差しの少ない高原地帯で、風は冷たく水が凍る。ここの民は遊牧民が多く、寒気に苦しめられ、 また乳製品を多く食べるため内臓を冷やす。そのため火を使った焼灼療法が生まれた。お灸の術は北方の国で発達し、ここから伝わったものである。
南方の国は、高温多湿の土地であり、万物がよく繁茂する地域であり、ここの民は果物などの酸味のものをよく食べる。 そのため筋肉の麻痺や引きつる病気になる。そのため微針を使う術が生まれた。鍼の術は南方の国で発達し、ここから伝わったものである。
中央の国は、平地で気候に恵まれ、物産が豊富で美食であり、激しい肉体労働をすることがないため、 ここに暮らす民は手足が萎えて冷え、頭がのぼせるなどの慢性症が多い。 そのためからだの動きを整える整体術が生まれた。按摩の術は本土中央で発達した医術なのである。」
つまり中国の東の地域で瀉血や排膿、西の地域で漢方薬、北の地域でお灸、 南の地域で鍼、中央地域で整体マッサージがさかんに行なわれていたようです。その土地の気候風土にうまくとけこみ、日常の生活の中で発展してきたのです。
ここであまり耳にすることのない「砭石(へんせき)」について簡単にご説明いたします。砭石は古代中国の新石器時代に発明されたもので、 石を鋭く加工して作られた石針としてツボを圧迫したり、こすることにより皮膚に刺激を与えたり、 外科的なメスとして排膿や瀉血に使用されていたといわれております。その後時代とともに石針は、動物の骨を加工した骨針、 竹でできた竹針、陶器の破片で作られた陶針などが現れ、約二千年ほど前に金属の鍼が作られるようになりました。 まだまだ異論もありますが、砭石は現在の鍼の起源ともいえます。
また東洋医学の源流については「漢書」という書物にはこのような分類もございます。 「中国本土の西北域にあたる黄河上流域で発達した『本草医学』は、神農を祖と仰ぎ、神仙思想を基に延命養身の法を説いていました。
中国本土の東南域にあたる揚子江下流から江南の比較的広い地域で発達した『傷寒論医学』は、張仲景を祖と仰ぎ、 薬草を使用する経験主義の湯液医学、つまり漢方薬が盛んに行なわれていました。
中国本土の東北域にあたる黄河流域の広い範囲で発達した『内経医学』は、黄帝を祖と仰ぎ、天人一合思想を素とする、 いわゆる陰陽五行論に基づく鍼灸の医学が行なわれていました。」
それぞれの代表する書物が「神農本草経」「傷寒雑病論」「黄帝内経」となります。
最初にご紹介いたしました黄帝内経と後の漢書とは、すこし分布が異なるようですが、なにぶん大昔の話でありますので、 このような記録があったという程度にお考えください。正直申し上げますとまだ分かっていないことも多くありますので、 説の一部とご了承くださいますようお願いします。
これらの医術が日本に伝わったのは、3世紀ごろの大和朝廷時代に朝鮮半島から韓医方として伝来しました。 それ以前の日本にはまだ呪術的医療しかなかったようです。その後7世紀ごろになると聖徳太子による遣隋使や遣唐使により、 本格的に中国の先進医療の知識や技術・制度が移入されるようになりました。
その後長い年月とともに、日本人の体質や習慣に合わせて独特の改良が加えられるようになりました。 とくに特徴的なものは、江戸時代に盲人の杉山和一により考案された「管鍼法」があげられます。 鍼を管にセットして刺す方法は、その後日本の刺鍼法の主流となっております。
また鍼灸や按摩マッサージなどの、医療に視覚障害者が積極的にかかわっている我が国の制度は世界的にも珍しく、 障害者の自立を目指す手段として、近年海外でも注目されています。
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